母乳育児をお勧めする10の理由
母乳育児をお勧めする理由とは、
「母乳が、赤ちゃんにとって最適・最高の栄養だから」 です。
母乳は、どんな人工乳より優れた点が多いことが分かっています。
さらに、お母さんは、赤ちゃんに母乳を与える (授乳) によって、お母さん自身が獲得した免疫物質を赤ちゃんに受渡すという、次の世代をより健康で安全に繁栄させるための重要な役割をも果たしているのです。
また、授乳によるスキンシップは、赤ちゃんとの信頼関係を築き、授乳中に赤ちゃんの健康状態をチェックすることもできるのです。
母乳育児中の赤ちゃんは、お母さんさえ一緒ならば、どこへでも身軽に出かけられて、いつも新鮮で美味しくて温かく衛生的な食事 (=母乳) がもらえるのです。
完璧で最適な栄養=母乳とは、安心で安全な最高品質、しかも、調乳準備も手間も時間も場所も要らない快適性、すべての条件を満たす 『あなたの赤ちゃんのためにだけ準備されたパーフェクトな食べ物』 なのです。
この母乳の素晴らしさを熟知しているからこそ、母乳育児をお勧めしたいのです。
実は、こんなことも言われています。
『その赤ちゃんには、その赤ちゃんのお母さんの母乳ほど適したものはない』 と。
例えば、未熟児ちゃんが生まれた場合には、
『その未熟児ちゃんのお母さんからは、子宮内でのその子の成長段階に適した 「その未熟児ちゃん専用のおっぱい」 を出しているのだ』 と言われているのです。
「母乳は、素晴らしい!!」 としか言いようがありませんね。
ですから、赤ちゃんに母乳をあげることもやっぱり素晴らしい事なのです。
このページでは、その母乳の素晴らしさをできる限りお伝えしたいと思います。
母乳がすばらしいと断言できる10の理由
1.母乳が栄養面において完璧であること
2.母乳から与えられる免疫機能が大変重要であること
3.母乳が産後の母体回復に密接に関わっていること
4.母乳が赤ちゃんの繊細で豊かな味覚を育てること
5.母乳をよく飲む赤ちゃんは、離乳食への移行が楽であること
6.母乳育児でスキンシップが楽にとれること
7.授乳をするだけで赤ちゃんの健康チェックができること
8.授乳するお母さんの心臓の鼓動が伝わり、感情が豊かに育まれること
9.育児のコスト(ミルク代)が抑えられること
10.母乳育児でお母さんのダイエットにも効果があること
理由1.母乳が栄養面において完璧であること
母乳は、栄養面からみて 「赤ちゃんの栄養にとってパーフェクトな食物」 です。
実は、ミルクのタンパク質と母乳のタンパク質は、量や組成、性質がかなり異なります。
ミルクは牛乳から作られています。
牛乳は胃液と反応して、カード(乳餅)をつくり、固くなってしまうという特徴を持っています。
(牛のように4つの胃袋がある動物はそれでもよいのですが、人間の赤ちゃんにとっては消化不良の原因にもなります。)
それに比べ、母乳は牛乳よりはるかに軟らかいカードを作るため、赤ちゃんの消化、吸収には最適なのです。
最近では、ミルク製造の技術も進歩し、母乳の成分に近づける研究がされて 「ソフトカード」 という名称のミルクもありますが、まだ、母乳には及びません。
また、母乳には、タンパク質だけでなく、脂肪分や乳糖、ビタミン類、ミネラル、塩分、ホルモン、酵素など、赤ちゃんが成長発達していくのに必要なものが全て含まれており、しかも、実に適量が含まれているのです。
更に、前述のように、未熟児を産んだお母さんの母乳と成熟児を産んだお母さんの母乳では、成分がまるっきり違うのです。
タンパク質や電解質が不足しがちな未熟児の赤ちゃんにとっては、未熟児ちゃんのお母さんから出る 「タンパク質や電解質が豊富な母乳」 が最適なのです。
自然の妙と言うほかないでしょう。
酵素については、母乳に含まれているリパーゼという消化酵素があります。タンパク質や電解質が豊富な
このリパーゼは消化しにくい乳脂肪消化吸収を助けています。
ミルクに比べて母乳の消化が良い秘密は、こんなところにもあるのです。
理由2.母乳から与えられる免疫機能が大変重要であること
母乳には、免疫を赤ちゃんに受け渡すと言う大切な機能があります。
この免疫の面を考えると、ミルクは、到底母乳にはかないません。
出産してから2~3日の間にお母さんの乳腺から分泌される母乳を 「初乳」 といいます。
初乳は、分泌量こそ少ないのですが、その中には免疫グロブリンA(IgA —アイジーエー—)と呼ばれる免疫物質を多量に含んでいます。
(このIgAは、胎盤を通じて赤ちゃんに運ばれる抗体とは、全く別の働きを持っています。)
初乳中のIgAは、赤ちゃんの口から入り、胃や腸の粘膜に広がり、細菌やウイルス、アレルギーの原因となるタンパク質の侵入を防いでくれます。
よく、 「母乳で育てた赤ちゃんは丈夫だ」 と言われますが、この初乳の働きが重要と考えられているのです。
仮に、もしミルクで育てる状況になったとしても、初乳を飲んでいた場合と最初からミルクのみ場合では違ってくることになりますから、是非とも、初乳だけでも飲ませてあげたいものです。
また、母乳の中には、ラクトフェリンというタンパク質が存在しますが、これは赤ちゃんの腸の中で鉄分と結びつき、腸管からの鉄分の吸収を効率よくします。
その結果、腸の中の鉄分が少なくなります。
鉄分が少ないことで、大腸菌の繁殖が抑えられ、ビフィズス菌などのいわゆる 「善玉菌」 が優勢になります。
(まだ、研究途上ですが、腸内細菌と成人の腸疾患との間に関連があると言われています。)
さらに、赤ちゃんが風邪をひくと、お母さんの母乳の中にその風邪のウイルスに対する抗体が出てくる、という報告があります。
すなわち、母乳を飲むことは風邪の治療にもつながっているのです。
母乳を飲んでいる赤ちゃんは、ミルクだけを飲んでいる赤ちゃんに比べて気管支炎や肺炎を起こす頻度が低い、というデータがありますが、母乳を飲むことで病状の進行がある程度食い止められていると考えられています。
母乳の中には、リンパ球などの白血球も多数含まれており、母乳自体に殺菌力があります。
ですから、哺乳瓶でミルクをあげる時と違って、消毒をする必要はありません。
母乳育児に慣れてしまえば、母乳の楽チン加減がよくわかっていただけるともいます。
赤ちゃんが泣けば、さっとおっぱいをくわえさせる!
本当に、これだけで済むのです。
理由3.母乳が産後の母体回復に密接に関わっていること
出産後、子宮が収縮することにより、お母さんの身体は回復に向かいます。
この子宮収縮に関係しているホルモンがオキシトシンです。
オキシトシンは、子宮収縮と共に、射乳、すなわち母乳をピューッと出すことに関係しているホルモンです。
赤ちゃんがお母さんの乳首を口に含んで母乳を飲むことにより、オキシトシンが分泌され、お母さんの子宮収縮が進むのです。
すなわち、お母さんが頻回に授乳させるたびに、自然の 「子宮収縮剤」 を赤ちゃんがお母さんに提供してくれるわけなのです。
また、母乳を飲ませると、プロラクチンという母乳分泌に作用するホルモンがたくさんお母さんの身体に生じます。
このプロラクチンは、別名 「母性化ホルモン」 や 「愛情ホルモン」 ともいい、母性を作る大切なホルモンなのです。
プロラクチンがたくさん分泌されているお母さんは、子どもに夢中になります。
例えば、授乳中のお母さんは、他人の赤ちゃんの泣き声が気にならなくなります。
自分の子の泣き声以外には敏感でなくなってしまうのです。
また、授乳中のお母さんは、夜何回も起きなければならないのに、昼間は意外と元気です。
これも、プロラクチンのはたらきで、お母さんが極めて効率の良い体質になっています。
細切れの睡眠でも十分体力の維持ができるようになっているのです。
さらに、プロラクチンによって、お母さんは妊娠しにくくなります。
絶対妊娠しない、ということではないのですが、妊娠しにくくなることにより、現在の我が子に集中できるというわけです。
年子で子どもが生まれると、育児がたいへんなのは、お分かり頂けるものと思います。
理由4.母乳が赤ちゃんの繊細で豊かな味覚を育てること
おなかが空いた赤ちゃんが飲み始めるおっぱいは、やや糖分が多くて甘く、赤ちゃんの食欲をそそります。
その後、飲み進めていくと、次第にタンパク質の含有量が増え、食欲をそそられた赤ちゃんがタンパク質をぐいぐい飲んで摂取するようにと、母乳には実に好都合な自然の味付けがしてあるのです。
※タンパク質は赤ちゃんの体を作る一番大事な栄養素
そして、飲み終わりのおっぱいは、脂肪分が多くなっていて、赤ちゃんに満腹感を与える仕組みになっています。
ですから、飲みすぎる心配がありません。
母乳を飲んでいる赤ちゃんは、フルコースのような食事を食べ、味覚を研ぎ澄ませるよう仕組まれているのです。
理由5.母乳をよく飲む赤ちゃんは、離乳食への移行が楽であること
母乳育児では、離乳食への移行が簡単にクリアできるのです。
その理由は、母乳(お母さんの乳首)とミルク(哺乳瓶)の飲み方の違いにあります。
哺乳瓶でミルクを飲む場合、赤ちゃんは、哺乳瓶の乳首を 「吸い」 ます。
要は、哺乳瓶は、吸えば出てくる仕組みになっているのです。
ところが、母乳の場合は、お母さんの乳首を吸っただけではおっぱいは、なかなか出てきません。
赤ちゃんが顎と舌を使って乳首を噛むようにして、歯茎でおっぱいの乳頸部というところをしごくようにし、しばらく待って、射乳反射が起こって出てくる母乳をゴクンゴクンと飲むのです。
すなわち、母乳を飲んでいる赤ちゃんは、乳首を吸っているのではなく、むしろ 「噛んで飲む」 という食べ方の練習をしているのです。
母乳育児が離乳食に移行しやすい理由がわかっていただけたでしょうか?
母乳で育ってきている赤ちゃんは、生まれてから数ヶ月間 「噛む」 練習をしてきていますので、離乳食への移行もスムーズなのです。
赤ちゃんが母乳を飲むということがいかに複雑なことをしつつ自分の食事の変化に適応しやすく仕組まれているのかがおわかりいただけたでしょうか?
さらに、母乳にはビタミンも豊富に含まれているので、離乳食を始める前に果汁などを飲ませる必要はありません。
もちろん、離乳準備食などというものも必要ありません。
理由6.母乳育児でスキンシップが楽にとれること
おっぱいは赤ちゃんの心のよりどころの赤ちゃんは幸せです。
ミルク育児でも、もちろん工夫すればスキンシップはできるでしょう。
でも、母乳育児は、より自然な形でスキンシップができますね。
おっぱいは、赤ちゃんにとって心のよりどころ、心の避難場所になっていくのです。
さみしい時、悲しい時、不安を感じた時、お母さんの温かいおっぱいが、どんなに赤ちゃんの心を慰めてくれるでしょう。
お母さんの温かい温もりを身体いっぱいに感じた赤ちゃんは、安心して次のステップへと成長していかれることでしょう。
おっぱいが栄養として本当に必要な期間は、おそらく8~10ヶ月程度とされています。
でも、赤ちゃんにとって、お母さんの温かいおっぱいは、身体の栄養として必要なだけではないのですね。
母乳の栄養が必ずしも必要でなくなっても、赤ちゃんが望めばおっぱいを吸わせてあげていただきたいと思います。
母乳育児は、人間が情緒豊かに育っていくために先祖から授かった財産であり、智恵と言えるのではないでしょうか。
理由7.授乳をするだけで赤ちゃんの健康チェックができること
母乳育児をされた方ならだれもが一度や二度は経験されるたでしょう。
赤ちゃんの発熱時には、乳首に熱が伝わってくるのです。
赤ちゃんにおっぱいを吸わせるときに赤ちゃんの吸い始めた口が熱いと感じるときには赤ちゃんは体温計が38度以上を示すはずです。
乳首が赤ちゃんの体温計の役割を果たしてくれるのです。
理由8.授乳するお母さんの心臓の鼓動が伝わり、感情が豊かに育まれること
おっぱいをお母さんの胸から直接飲むことでお母さんの肌の温度や心臓の鼓動が伝わり、母の心がわかる子になると言われています。
「母と子の絆」 が授乳のたびに結ばれ、赤ちゃんは自己肯定感を日々はぐくまれる環境を保証されているのです。
赤ちゃんたちの最初の心理的なルーツは、存在感、自己肯定感だあることが分かっています。
自分が 「ここに居てもいいのだよ」 と自他ともに認めらているべき存在であること。
自己肯定感が人間の人格形成の根幹になります。
母と子の絆、アタッチメント、スキンシップなどありとあらゆるものの根源が、 「あなたは居るだけで価値があるのだということ」 をしっかりと自覚できることなのです。
理由9.育児のコスト(ミルク代)が抑えられること
同じコストなら、あなたは、母乳に懸けますか?それともミルク代に懸けますか?
まず、赤ちゃんが一番ミルクをたくさん飲む生後5,6ヶ月ごろ(それ以後は、離乳食が増えてくる)の赤ちゃんの体重が7~8kgとすると、一日にミルクを1,300~1,500ml程度(飲む子はそれ以上)飲むことになります。
一ヶ月に40~45リットル程度飲むことになり、平均的なミルク代は約月に6,500~7,500円程度かかります。
(一缶1,000gで1,200円という、安く粉ミルクを購入した場合を想定して計算)
仮に、生まれてから一年間、平均して月30リットルずつ飲むと仮定すると、一年間で360リットル飲むことになりますから、ミルク代の合計は、6万円ほどになるわけですね。
馬鹿にならない金額です。
あなたは、母乳(自分の食事代)にコストをかけますか?
ミルク代にかけますか?
理由10.母乳育児でお母さんのダイエットにも効果があること
母乳育児は、実は、ダイエットにも効果があります!
妊娠中に太ってしまうお母さんが多いです。
太った分は、脂肪として身体に蓄えらます。
この脂肪が、授乳することにより、母乳の乳脂肪に変化していくのです。
そして、お母さんの身体からは無理なく脂肪が落ち、赤ちゃんの栄養に変わっていくのです。
自然の仕組みというものはすごく精巧にできています、母児相互に有効に仕組まれています。
素晴ですね!
いかがだったでしょうか?
ちょっと難しい言葉も出てきてしまいましたが、母乳と母乳育児を勧める理由がわかって頂けたでしょうか?
母乳育児は、とても楽しく、赤ちゃんにとっても良いことが多いのです。
母乳育児は、女性の特権です。
楽しんで取り組みましょう!